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多様な働き方制度導入企業インタビュー

多様な働き方制度導入企業インタビュー

まず個人があり、そこに仕事が加わる。だから「With Work」
株式会社デンソーエアクール
1966(昭和41)年創業のデンソーエアクール。「冷やす」と「暖める」の技術をベースに、バスエアコンや建設機械用・農業機械用エアコンをはじめ、住宅用全館空調システムや、パソコンサーバールームを冷やす業務用空調機器など幅広く手掛けています。
人事総務部の河地誠さん、宮沢智大さん、小坂朋代さんにお話を伺いました。

  • 制度は知ってもらうことがスタート。分かりやすく説明して活用してもらう

    河地さん
    以前は毎週金曜日に設定した定時退社日や、残業の許可制、管理職による見回りにより、残業低減を推進してきました。残業は一度減らすことができれば「この時間に帰るのが普通」と思えるようになります。今ではそういう「帰る癖」が付いてきたため、ずいぶん定着してきたことを感じています。
    しかし、早く帰ろうという心掛けだけでは限界があるため、今後更に残業を低減していくためには業務の効率化を進めていく必要があります。そのため、社内に業務改善の専門組織を作り、全社の仕事の効率化を加速させています。
    また、多能工化や、1つの仕事を2、3人のチームで行うようにすることで、「その人にしかできない仕事」を減らし、残業低減と有休取得の推進を図っています。

    小坂さん
    育児休業については、2009年から女性は100%取得しています。また、男性の育休取得率は2021年度で60%、以前の当社の状況や、厚生労働省の雇用均等基本調査の平均取得率12%程度に比べればずいぶん上回ってきました。忙しいし、職場の皆に迷惑を掛けるので取らない、という声もあります。制度があるというだけではなかなか推進は難しいので、社内報などで取得した社員の声を紹介したり、お子さんが産まれた男性社員とその上司全員に制度について説明したりしています。上司から「自分のときはこういう制度がなくて、家族に迷惑をかけた」という体験談や、「今の業務は、代わりにこの人に任せれば大丈夫」という話を聞いて、取得することを決めた人もいます。

    宮沢さん
    会社としては、規程にしなければいけないので、どうしても小難しい書き方になってしまいます。自分も人事担当でなければ、読むことすら躊躇したり、理解が追い付かなかったりすることもあると思います。そのため、イラストを多用しなるべく平易な言葉を使って作成した資料の提示や、経験者の話や上司を交えた面談など、さまざまな形でコミュニケーションを取りながら、制度をまず知ってもらうということがスタートラインだと思っています。

    コロナ禍はオンラインで行った「With Work」推進委員会
  • 社員の声を把握しながら、どんな人でも活躍できる会社に

    宮沢さん
    2020年度に「With Work」推進委員会を立ち上げました。これは「〇〇with work」、例えば「育児with仕事」というように何かと仕事を両立するための施策を考える場です。私たち人事総務が事務局となり、経営側と従業員側から代表者が集まって、制度を皆で作っていこうという取り組みです。
    「With Work」という名前は、育児、介護、病気治療など、どんなことにでも対応ができるようにと考えて決めました。優先順位は仕事が第一ではなく、先に働く本人があって、そこに仕事が付いてくる。社員各々、さまざまな事情を抱えていますが、どんな人でも活躍できる会社にしようという思いが込められています。

    小坂さん
    制度も社員の声を反映させながら、少しずつ改善をしています。例えば育児休業は、子どもが2歳になる日までだったのが3歳になる年の年度末まで、時短勤務を選択できる期間も、6歳までだったのが小学校3年生の年度末まで延ばしました。介護休業も1年から2年に延長。有休は、病気治療のためであれば時間単位で取れるようにしました。
    また、失効してしまう年次有給休暇の一部を積み立てられる「積立保存休暇」を育休に充てられるようにもしました。1週間育休を取って、奥さんと一緒に育児をすることで大変さが分かり、2人目のお子さんの時も積極的に育休を取得した社員もいます。

    河地さん
    私たち人事総務室としては、社員の求めているものと合うように、より良い環境を整えたいという思いがあります。そういう意味では「With Work推進委員会」には労働組合のメンバーもいますので、労働組合が把握している組合員の意見や考えなどを反映させながら取り組みを進めています。
    今後課題だと考えているのは社員の高齢化です。その後の役割や処遇は定年前の等級ごとに一律となっていますが、今後は組織の状況と一人ひとりの希望に応じて、活躍の仕方を選択できるような制度にしていきたいと考えています。