現在、有給休暇の取得率は70%を上回り、目標としている80%まであと一息というところです。少し前までは、職員同士が何となく遠慮し合って、なかなか休めないという雰囲気がありました。まずは、計画的に取ってもらうことから始めて、そこから「リフレッシュして、いい仕事をする」という考え方をベースに、有休の取得を勧めてきました。そうすると徐々に「有休が取りやすい環境にしなければいけない」と職員の意識が変化してきました。
ハードルとなったのは、事務職は取りやすいが、介護職は取りづらいという部署間の差です。そこで、部署内だけではなく、法人全体で助け合えるような体制を少しずつ整えていきました。事務職の人には介護の勉強をしてもらって、介護職の人が休んだときにフォローする。逆に介護職の人が事務作業を担えるようにする。これが有休の取得だけではなく、職種の壁をいい意味でなくすことにもつながりました。コロナ禍で、職員が休まざるを得ない状況ができたことも、部署を越えてカバーし合うことの必要性を実感することになりましたね。互いの仕事への理解が深まったことで、職員の一体感も生まれました。
業務の分担も進め、例えば、ベッドメイキングや掃除などの環境整備、食事の配膳、物品の準備などは専門的な知識がなくてもできるし、勤務時間も長くないので、高齢者や障がい者雇用、短時間のスポット雇用を行っています。これにより、勤務体系のパターンが増え、それぞれの職員に合わせた働き方が選べるようになりました。時短勤務の選択肢も広がったので、出産を機に退職・離職する人も減りました。
育児休業についても、男性はここ3、4年で取得する人が増えてきました。長期間ではなく、「奥さんと交代する日」として月に数日取るという人もいて、柔軟に自由な取り方ができるようにしています。男性が育児に目を向ける機会にもなっていると感じています。
福祉・介護機器の導入を積極的に行うことで、職員の肉体的な負担の軽減や、作業効率や安全性の向上を図っています。例えば、車椅子に変形するベッドや、浸かると細かい気泡が出て体がきれいに洗える浴槽、食事に自動でとろみを付ける調理器具など。「こういうものがあったら便利」という現場の声を形にしようと、専門業者と一緒に開発しているものもあります。
当法人では2016年から外国人雇用を積極的に行っています。その中で、話すことは大丈夫でも書くのが難しいという「言葉の壁」が課題の一つになっていました。そこで音声入力ができる機器を使って記録できるようにしたところ、これが外国人に限らず、「報告書を書くのが苦手で時間がかかる」という人にも好評で、結果的に業務改善にもなりました。
業務の分担と機器の導入で、専門性が必要な作業に割ける時間が増えたことが大きなメリットだと思います。介護に携わる人は、利用者とのコミュニケーションを大切にしたいという気持ちが強い。その時間が確保できれば、気持ちにも余裕が生まれ、やりがいにもつながります。介護業界の人材不足は、今後ますます深刻化すると言われていますが、職員に負担を強いることなく、よりよいサービスを提供できるように、さまざまな取り組みを進めていきたいです。