企業・事業主の方

多様な働き方制度導入企業インタビュー

多様な働き方制度導入企業インタビュー

鍵になるのは属人化の解消。後回しにせず、やるべきこととして進める
株式会社炭平製作所
株式会社炭平製作所は、銅合金鋳造の素形材専業メーカーです。近年は、金型設計製作から機械加工まで一貫体制を敷き、ユーザーのニーズに合わせたものづくりを行っています。総務部人事課課長の宮澤毅さんにお話を伺いました。
  • 以前から受け継がれてきた、互いに助け合える環境

    当社で男性社員が最初に育休を取得したのは2017(平成29)年です。その頃は社内でも、「え?男性が?」「育休を取って何をするの?」というような空気だったと思います。それでも、女性は取れるけど男性は取れない、というわけではなかったので、休んでいる間の仕事を誰がどうやってフォローするかを相談して決めて、無事に育休を取得。制度もまだ整っていなかった頃だったので、本人と上司、周りの社員が話し合って調整をする以外、方法はなかったのだと思います。

    本格的に制度を整え始めたのは、2022年頃です。育休の法改正がきっかけにはなりましたが、育児だけに限らず、働き方・休み方の改善と位置付けています。まず取り組んだのは、属人化の解消です。従業員のスキルマップを作って業務を洗い出し、一つの業務に対して複数人が対応できる状態を目指して、人を育てていくようにしました。誰でも分かるような作業マニュアルも作成。「この人しかできない」という業務を減らすことで、育休以外にも病気や入院での休職、急な退職による業務停滞のリスクを回避できるようにしてきました。実は当社には繫忙期などで人員不足が発生した場合は、管理職や事務職の人が現場に入ることがあります。部署を越えて互いに助け合うのは、当社の社風と言えるもの。以前から脈々と受け継がれています。

    総務部人事課の宮澤毅課長
  • 本格的に取り組みを始めて、2年ほどで徐々に浸透

    業務の属人化は多くの場合、リスク要因として捉えています。解消を進める一方で、責任感がある人ほど「自分の仕事」という意識が強く、ほかの人に全てを任せることに抵抗があるという声も聞きます。実際に、仕事上で何か問題が発生した時は、この人にお願いするしかない、という場合もありますし、頼られることが本人のモチベーションの向上につながっている場合もあります。属人化の解消を一気に進めるのは難しい面もありますが、社員の思いも反映させながら、対応していきたいです。

    育休の取得推進の一環としては、管理職に対して短期間でもいいので休みを取るように呼びかけています。なかなか休めない、という人もいますが、管理職が育休を取ることが一番いい事例になり、社員もそれに続いていくと考えています。働き方・休み方の改善を進める中で、世代によっては「自分の頃はなかった」という人も少なくありません。それでも、会社の考えとして丁寧に説明することで、理解を得られてきていると思います。取り組みを始めて2年ほど経ち、最近は半年間ほど育休を取得した男性社員もいて、徐々に浸透してきたと感じています。取得期間だけではなく、復帰後の短時間勤務なども含め、育休については人それぞれの希望があるので、なるべくそれに沿った形で取得ができるように努めたいと思っています。

男性の育児休業取得推進ポイント

属人化の解消といっても、普段は“今、目の前にある業務”を優先してしまいます。スキルマップや作業マニュアルは“あったほうがいい”ですが、後回しにされがち。社員も皆、自分の仕事を持っているので「やっておいてね」だけでは進みません。会社がやるべきこととして決めていく必要があります。いつ、何があるかは誰も予測ができないもの。いつか、ではなく少しでも早く準備するに越したことはありません。(宮澤さん)