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多様な働き方制度導入企業インタビュー

多様な働き方制度導入企業インタビュー

「働き方改革」の実現に向けて、必要なことを確実に
春原建設株式会社
地域に根差した建設・環境事業を展開する春原建設。人材育成事業も手がけ、介護職員や建設人材を養成する「マスターカレッジ住吉校」の運営も行っています。
代表取締役社長の春原文浩さんにお話を伺いました。
  • 業務改善のためには、情報共有、分散化、協業

    建設業は、他産業と比べて労働時間が長く、休日数も少ないことが課題でした。しかし、現在は長時間労働の是正に向けて、週休2日の推進と総労働時間の削減に業界全体で取り組んでいます。当社でも、有給休暇を半日単位で取得できるようにしたり、勤務間インターバル制度を設定したりと、休むための工夫をしていますが、根本的に変えなければいけないのは仕事の仕方です。これまで週に6日かけてやっていたことを5日で、しかも残業なしでできるような仕組みを作らなくてはなりません。そのためには業務改善、まずは情報共有。業務を一人に集中させるのではなく、分担し、共有することが大事です。今、誰が何をやっているのかを“見える化”するには、パソコンが必須。そこでパソコンのスキルを社内で確認してみると、皆、使えることは使えるけれど自己流で、何か書類を作ってみてもそれぞれ違うものができあがるという状態でした。ふだん、机に向かって長時間作業しているわけではないので、これまではなかなか時間をかけられませんでしたが、もう言い訳できないですよね。そういうところも取り組みを進めています。

    現場でも、タブレットやパソコンを持ちながら作業することが増えました。これは、建設=力仕事というイメージを変えるきっかけになると思っています。例えば女性でも、現場が始まって引き渡しまで、1から10まで全ては難しくても、部分的に担うことはできる。そのためにもやはり情報共有、そして分散化と協業が肝心です。当社では、建設人材の養成も行っていますが、昨年の受講生は女性が半分以上で、全員が未経験。資格がないと厳しい世界ですが、逆に、資格があれば経験は後からついてきます。実際に現場に入るとOJTになりますが、それでも資格を持っている人は、作業のイメージができているので、動き一つにしても全然違いますね。会社でも全面的に資格取得を推奨しています。

    代表取締役社長の春原文浩さん
  • 会社がすべきこと、ではなく、自身がどうしたいか

    若手社員の雇用にも力を入れています。インターンシップや、職場体験、職場説明会では、当社のことだけではなく業界についても理解してもらえるよう努めています。私自身、数年前から採用活動の場で学生と接するようになって、このままではいけないという危機感を抱きました。学生の皆さんは、SDGsを勉強しているし、今だけではなく、10年後、20年後を見ています。残業代で稼ぐという時代ではないですし、時給ではなくミッションに対して報酬をもらうという考え方にしていかないと、この先、会社を継続することは難しくなると感じています。
    社内の人材育成スキルの向上、自社の制度を活用した技能の習得・業務の標準化や効率化も進めています。CCUS(建設キャリアアップシステム)による能力評価や、厚生労働省による職業能力評価基準を連動させた訓練計画の作成、そして在職者の若手育成に対する意識強化など、一人一人の社員がやりがいを感じながら、スキルアップに積極的に取り組めるような環境を整えています。

    制度の整備は大切ですが、それだけで多様な働き方の推進ができるわけでありません。社員の業務負担に偏りがあれば、仕事上の諸問題に留まらず、私生活や心身の健康、社員同士の人間関係に対して悪影響を及ぼすこともあります。
    先日、社内アンケートを取って、自分の職場がどうなってほしいかを聞きました。「楽な仕事で、たくさん給料がもらえればいい」というのが本音かもしれませんが、ではそのためには何が必要か。どうすればいいかではなく、どうしたい?と問いかけています。そこでちゃんと腹を割って話ができるためには、風通しを良くしておかなければいけない。難しいけれど、そういう状態を維持することも、経営者の役目だと思っています。