企業・事業主の方

多様な働き方制度導入企業インタビュー

多様な働き方制度導入企業インタビュー

利用者とその家族、そして職員に“幸せの連鎖”が生まれる環境を
社会福祉法人信濃こぶし会
豊丘村と喬木村に事業所を構える社会福祉法人信濃こぶし会。障がいのある人たちの自己実現を支援し、さまざまなサービスを提供しています。理事長の高本隆光さんにお話を伺いました。
  • 業務の切り分けを進めることで、あらためて見えてきたもの

    子育て世代の職員が多いこともあり、仕事と家庭が両立できるような仕組みを整えてきました。例えば、子どもの看護休暇の取得対象は小学校就学前から小学校3年生までに延長。育児や介護のための残業免除も、3歳未満から小学校就学前の子どもがいる職員に対象を広げました。短時間勤務制度や始業時刻の変更制度を導入し、保育園への送迎などにも柔軟に対応ができるようにしています。これらはちょうど、対象となる職員がいたことから、要望に応える形で実現したものです。

    当法人では現在、130人ほどが働いており、正規職員だけでなく、朝夕の送迎や食事の盛り付け、着替えの補助といった業務にスポットで入っている職員もいます。最長75歳までの再雇用制度も設け、経験豊富なシニア世代も活躍しています。人手不足は、福祉業界全体にとって深刻な問題で、フルタイムの正規職員の求人を出しても、なかなか人が集まらないのが現状です。どうすればいいか試行錯誤する中、短時間の求人に反応があったので発想を転換し、業務の切り分けを行うことにしました。まずは、1日にやらなければいけない業務を洗い出し、専門的な知識や技術が必要なものと、資格や経験がなくてもできるものに分けて、把握することから始めました。当法人は豊丘村と喬木村に10の施設があり、利用者さんは150人を超えます。以前は朝夕の送迎も正規職員が担っていましたが、適材適所の配置を行うことで、負担を軽減しました。皆で見直すことで、職員間の共通認識を確認したり、支援の質についてあらためて考えたりする機会が増え、業務改善にもつながっています。組織にとって、“業務の見える化”や、属人化の解消などのメリットも生まれています。今までのやり方を変えるというのは、簡単なことではないかもしれませんが、職員同士で協力しながら体制づくりを進めています。

    理事長の高本隆光さん
  • 業務の負担を軽減することで、仕事の魅力を感じる瞬間を増やしたい

    今後は、AIの活用に力を入れたいと考えています。現在は事務職員が手入力しているデータを、各職員がタブレットで直接入力できるようにして管理し、計算も自動化すれば、業務効率化を図れます。また、日々の記録や計画書などの文章についても、ある程度フォーマットを用意して、あとは音声入力で作成できるようになれば、職員の負担軽減になります。
    そのほか、課題だと感じているのは男性職員の育児休暇取得です。当法人では女性職員の割合が高く、力仕事などはつい男性職員を頼ってしまいがちです。本人も責任感が強く、なかなか休みづらいのではないでしょうか。いきなり長期間というのは難しくても、少しずつ休みを取れるような形にしていきたいと思っています。

    福祉の仕事に対して「大変」というイメージを持っている方もいますが、私にとっては利用者の皆さんと職員が一緒に楽しめる場であり、それが大きな魅力だと感じています。当法人では毎年、飯田女子短期大学幼児教育学科の実習を受け入れているのですが、それをきっかけに福祉の仕事に興味を持ってくれる学生さんもいます。中には、それまで目指していた保育士から進路を変更して「ここで働きたい」と言ってくれる人や、実習が終わってからもボランティアで来てくれる人、そして実際に入職した人もいます。
    当法人は、障がいのある我が子を案じた親御さんの「自分らしい暮らし」と「社会参加」という願いから出発しています。それもあって、地域の皆さんと一緒に楽しめるように、夏には納涼祭、秋には「こぶし祭り」などさまざまなイベントを開いています。豊丘村にある「こぶし園」は、すぐ近くに豊丘中学校があり、中学生との交流も行っています。利用者さんの幸せは、そのご家族、そして職員の幸せになります。職員一人一人が、“幸せの連鎖”を実感できるような環境を整えていきたいです。