
当社では時間単位で有給休暇を取得できるようにしています。そもそも有給休暇の取得は労働者の権利。気軽に取ってもらいたいんですが、なかなかスムーズにはいきません。世代によっても「取らない」「取れない」理由が違います。年配の方はそもそも休むこと自体への抵抗感が強い。若い社員は入社したてで日数が少ないから、体調を崩したときのために残しておきたいと思っている。中堅の方たちは「上の人が取らないと取りにくい」と感じている。そして根底には、「自分しかできない仕事があると休めない」という問題があります。有給を取るために前日に残業したり、翌日に溜まった仕事を片付けたりしなければならない、というのは本末転倒ですよね。
そこで、全部ではなくても6~8割くらいは他の人でも仕事ができるようにマニュアルを整備しました。年1回行っている面談の場でも、「有給の消化率を上げることを会社の目標にしている」と明示して、会社として取ってほしいというメッセージを繰り返し伝えています。
酒造りといえば早朝から始まり、3食用意して蔵に泊まり込むということが普通でした。それが変わったのは15年ほど前、杜氏が70代のベテランから交代したことがきっかけでした。仕事を引き継いだ若い30代の杜氏が、「このままの造り方を続けていては、若い人が入ってこなくなってしまう」と危惧して、仕事の流れを一から分解して考え、組み直してくれました。その結果、製造部門も他の部署と同様、始業は8時になりました。年配の方からは「本当に大丈夫か」という声もありましたが、やってみたらちゃんと回った。自分が現場で大変な思いをしてきたからこそ、「もっといい方法があるはずだ」と考え続けてくれていたんだと思います。現場から変えたいという声が上がったときに「まずはやってみよう」と後押しできたことが、大きな一歩につながったのかもしれません。

業務の効率化という面では、新たな機械の導入やシステムの見直しにも継続的に取り組んでいます。製造現場では以前から、できる工程は機械に任せる方針を取っており、例えばスマートフォンを使って、リアルタイムで蔵内の温度を確認できるようになっています。
事務部門では最近、業務管理システムをクラウド型に切り替えました。これまでのシステムは長年使っていたものですが、特定の担当者に業務が集中してしまうという課題がありました。クラウドに変えたことで、どのパソコンからでも同じデータを見られるようになり、社内外問わず使うことができるようになりました。ただ、現場の目線で言えば、使い慣れたものを手放すのは大変です。「何で変えるんだ」という気持ちも分かります。でも、数年後には作業が楽になって、「あの時に変えておいて良かった」と思ってもらえると信じています。
私の父は40数年、社長としてこの蔵を率いてきました。「できることは機械に任せる」というのも父の代から取り組んできたことです。
私自身、子どもの頃から蔵の仕事を身近で見てきて、働いている人たちにはかわいがってもらっていました。私が社長になって3年が経ちますが、「言うは易し」で、現場には苦労をかけていることも多いです。それでも今、一緒に働いてくれている人たちの生活はもちろん、これから入ってきてくれる人たちのことも考えて、試行錯誤しながら、変えるべきところは少しずつ変えていければと思っています。
