中村さん
当社では以前から、社員が比較的自由に働ける環境を整えています。有給休暇は半日・時間単位での取得ができ、誕生日休暇、病気の治療などに使える特別休暇なども設けています。フレックスタイム制度もあり、コロナ禍を機にテレワークも本格的に導入しました。社員は20代の若手からベテランまで幅広い年齢層です。近年、ベテランの中には、地域活動や地元での役割を担う人が増えてきて、「フレックスを活用して時間が調整できるので助かる」という話も聞きます。普段の生活に何か支障があると、仕事のモチベーションにも影響が出ますよね。個々の事情に配慮しながら、ワークライフバランスを実現できるような働き方をサポートしたいと考えています。
近年の法改正に伴い、育児や介護に関する規定を作成し、就業規則を見直しました。育児休業についてはまだ対象者はいませんが、小中学生の子どもを持つ社員は学校行事に合わせて有給休暇を取ることも多いです。年5日の年次休暇取得義務についても、こちらから声がけを行い、比較的スムーズに消化してもらっています。ただ、それ以上の休暇取得となると、なかなか進まないのが現状です。幸い、当社には「周りを気にして休めない」といった休みづらい雰囲気はないようで、各々が必要に応じて休みを取っている印象です。今後は、育休など長期で休みたいという希望があった場合に、周りがどのようにサポートして滞りなく業務を遂行できるかが、課題になってくると思います。
植木社長
私は一人一人の社員が最大限に能力を発揮するために、会社としては何をすべきかを考えています。フレックスやテレワークといった、ある程度柔軟性を持たせた形で、本人に管理を委ねているのも、その考えが背景にあるからです。私たちは、社員数が十数人という小さな会社。国の制度や規則がそのまま当てはまらないことも多いです。少ない人数だからこそ、社員それぞれに考えや事情があることも把握しています。育児や介護休業、有給休暇の取得など、制度は整えていますが、休むことに対する考え方は人それぞれ。中には「そんなに休まなくてもいい」という人もいます。そうなると、一律に休んでくださいというのは、“多様な働き方”の推進にはなりません。画一的ではなく、なるべく個別の状況に応じた柔軟な対応していきたいですね。
私は最近、身内の介護をすることになったのですが、初めてのことで分からないことも多くて不安でした。自分でいろいろと調べてはみたものの、何が確かな情報なのか、決め手に欠ける。そうなると、どこかすっきりしないんですよね。そんな時に、例えば地域にどんな病院や介護施設があり、サポートをお願いするならどこへ行けばいいかなど、社内で気軽に情報交換できれば、安心できるのではないかと思いました。介護休業制度も大事ですが、休みが取れればそれでいいとも限らない。会社で毎日、顔を合わせている人同士で情報だけではなく思いも共有できるような関係性を築くことが、心の支えになることもあるはずです。
現在、社員の平均年齢は53歳。新卒採用が年々難しくなる中で、今、働いている社員が安心して働ける環境づくりがまずは大事です。そのためには、制度だけではなく、社員同士の関係性や交流が鍵になると感じています。柔軟すぎる対応は、ときには公平性の面で問題になることもありますが、少人数だからこそ、社員それぞれに寄り添いながら、全体として良いバランスを保てることが当社の強みです。まだ事例が少なく、試行錯誤の段階ではありますが、社員一人ひとりが安心して働ける職場づくりを、これからも試行錯誤していきたいと思います。